コンサルタントの課題認識と解決策:人手不足と移民法

今現在国会で審議されている外国人労働者に対する移民表の改正は、断固反対である。それで、先日国会議事堂周辺でおこなわれた集会(デモ?)を見てきた。どの程度のどんな層の人が集まり、そして集会での主張を聞きたく思い、小一時間ほど隅っこの方で見学していた。
自分自身が今まで何を行ってきたか、そして何が出来るのかについてを棚に上げての感想として、あの主張そして根底にある問題認識で何を変える事ができるのか、または人を動かせるのか...など、疑問に感じた。

 

政治には、様々な利権や我々一般市民にとって見えにくい内外からの圧力がある。集会の主催者の主張の中に、「この法案によって、一番喜ぶのは誰か...。それはあの隣国である。そしてその隣国から大量の移民が入ると、日本の文化や秩序がこわれてしまう...」の様な発言があった。これについては同意見ではあるが、集会で声を大にして云うには、半分論理性に欠ける感情的な意見に聞こえる。この様な主張を繰り返しても、一部の知識人しか理解&共感できないのではないだろうか。

それで、次の課題についてどう対応すべきか考えていき、具体的な方策の提示が必要ではないだろうかと整理してみた。
Ⓐ人でが足りていない事実。
Ⓑ企業としては、人件費を抑えたいと云う力学の存在。

 

Ⓐ人でが足りていない事実
現時点では労働者が足りていないのは事実である。但し、それらの不足の多くは、東京オリンピック開催までには解消されると云われているが...。この人員の不足は、特に地方の中小企業や、建築関連での人手不足は深刻の様だ。
これだけ見ると、単純労働またはブルーカラーの労働者のみが不足している様に感じるが、それだけではない。高い能力を持った人達を必要とする領域も、不足している。企業側から見ると、様々な領域(低賃金~高賃金)で人が不足している課題に対して、手っ取り早い解決策として、外国人を受け入れる事は、必然的な発想であり、だからこの法案を急いで通そうとしている。
この不足を解消する具体的な案として、コンビニの削減案を以前記載した。他にも様々な策をかんがえられるが、コンビニ削減は判りやすい例なので、一つの策としてこれを記載した。

 

では、今企業はどんな人材を求めているのだろうか、考えてみよう?分かりやすい例として、言語能力がある。自分が若い頃は、2か国語、即ち日本語と英語ができれば、かなり優位な職業につけた。しかし今は、3か国語を操れる事が求められてきている。そんな状況なのに、3か国語を話せる日本人の学生または若者は、一体どの位いるのだろうか?昔から大学では、第二外国語を取る学部もあるが、ビジネスで使えるレベルになっている学生は殆どいない。一方、中国や韓国、そして東南アジア各国の学生で、日本で働きたいと考えている人の多くは、少なくとも母国語+英語+日本語を話せる。日本の学生は、彼等外国人と争っている事に、まだ気が付いていない様だ。
何年か前に、シンガポールで一緒に仕事をしたインドネシア人は、インドネシア語+中国語+英語が話せた。彼は、アジアのみならず、世界の殆どの国で、仕事が出来る能力をもっている。シンガポールには、こんな人材が沢山いる。シンガポールではインド人、マレーシア人、フィリピン人などなど様々な民族が集まり、アジア全体の言語をカバーできている。なので、英語も満足に話せる人が少ない日本には、アジアを束ねる拠点が無くなって行った。

 

また、語学以外の能力として、行動力、チャレンジ精神、発想力・判断力などにおいても、日本の若者は、外国人に比べて見劣りしている。少なくとも企業からみてそう感じられている。そして、海外への駐在についても、消極的な日本人の若者が多い。となると、企業としては、外国人に目を向けざるを得ない。

 

この課題の根本的な原因は、日本の教育制度に問題がある事に他ならない。そしてこの教育に関して、大きく二つの問題点がある。
①教育の質の向上
②教育を受ける機会の平等

 

①教育の質の向上
教育の質の向上について、多くを語る必要はないだろう。何故なら、既に多くの人が認識しているから。ただ、政治および文科省の問題から、何も実現できていない。日本の大学の国際的な評価は年々下がっており、教育の劣化は目を覆いたくなる。
教育の質の向上には、次の3項目の考慮が必要ではないだろうか?
・語学
・教育の”内容”の変革(答えの有る問題を解く、そして記憶が優先される教育から、問題を見つけ、解決する手段を見出し、実行できる能力を育成する教育への脱皮)
・研究開発費の増加

 

語学:
高度成長期には、「資源のない日本は、資源を輸入して、加工し、それを海外に売ることで利益を得る必要がある」的な事が叫ばれ、大量生産を実現する為に必要な人材を教育してきた。今は、前にも述べた様に、様々な国の人達との接触(コミュニケーション)なしにはビジネスが成り立たなくなってきている。その為には、大学生には、日本語以外に2か国語をビジネスレベルで使えるレベルまで教育する必要がある。となると、高校レベルでは、英語を日常会話に支障がないレベルまで教育する必要があり、また、第二外国語の教育も検討すべきではないだろうか?

 

・教育の”内容”の変革:答えの有る問題を解く、そして記憶が優先される教育から、問題を見つけ、解決する手段を見出し、実行できる能力を育成する教育への脱皮が必要だ。外国人と比べると、日本人は問題を見出す能力が劣っている感がある。そう感じる理由の一つとして、昨年から今年にかけて政界で賑わした、俗に云う”モリカケ”問題。政治家やマスコミは、これは問題ではない事を十分認識していながら、単に政治利用している趣があるが、問題はTVや新聞の報道を鵜呑みにしている有権者が多い事にある。正に、問題を認識している脳力が欠如しているから、TVや新聞の”嘘”を見抜けない人が多い事に問題がある。そして仮にその問題点が把握できたとしても、解決策を考えられる人が少ない。それは、子供の頃から、自分の意見を云う機会がすくなかったからである。なので、学校現場で学生・生徒が自分の意見を云う機会を増やした教育を施す必要がある。

 

・研究開発費の増加
これについては、ノーベル賞受賞者が毎回述べている。基礎研究費が少なくなっている事を憂いていると...。国がもっとお金をつぎ込む必要がある事は云うまでもないが、企業が日本の大学に落とす(寄付または共同研究)お金が少ない事も問題である。USなどの海外の大学には沢山のお金を落としていると聞いている状況なのに...。ただこれは、日本の大学の研究魅力がない事の表れでもあり、日本の大学自信も、改革・改善をする必要がある事については付け加えたい。

 

②教育を受ける機会の平等
高等教育を無償にすべきとまでは云わないが、親の収入が少なくても、その子供には大学に進学できる仕組みが必要だ。親の収入が少ない為に、進学をあきらめる子供達も少なからずいる。ドイツでは、一部の公立大学では授業料が無料または少額と聞く。日本の大学も、授業料を少額にし、そして公立大学をもっと増やすベキである。但し、質を伴わない大学は不要なので、勉強しない学生には退学してもらい、また社会人になった後でも大学に入れる(受験勉強しないで)仕組みを作る必要がある。

 

授業料についてだが、アメリカの各州のトップクラスの州立大学では、授業料は概ね1万ドル+αの様だ(州の住民の場合)。外国人はその2倍から3倍程度。州立大学でも、レベルがちょっと下がると、5千ドル辺り授業料の所もあるみたいだ。そしてアメリカでは奨学金が充実している。やる気がある学生にとっては、決して高い授業料ではないのではないだろうか。

 

Ⓑ企業としては、人件費を抑えたいと云う力学
人手不足、そして移民法の話をしているハズが、学校教育の話ばかりをしてしまった。次は、企業としては人件費を抑えたい実情についての問題点の再認識と解決策の検討をしたい。
行き過ぎた人件費の抑制に至った原因には、主に次の3点があると云いたい。
円高が進行する際に、常にコストの削減を行う事で価格を下げ、国際競争力を維持してきた事。
・小泉&竹中主導の労働改革(非正規雇用の推進)。
民主党&白川日銀総裁時代の無策。

 

変動相場制に移行後、特にプラザ合意以降円高が進み、その都度日本の企業はコスト削減を行ってきた。当初は、製設備の刷新や生産の仕方の改善によるコストの削減で対応できた。製造の効率化によるコストの削減は大変大事だが、”円高→コスト削減と価格の低下→円高”のサイクルを作ってしまった。コストを削減し、売価を下げても、為替の変動によって円高が進めば、値引した金額なんど簡単に吹っ飛んでしまう事が、経営者には分からなかったのだろうか???本来であれば、為替の影響を受けにくい、付加価値の高い製品の開発や、製造拠点の現地化を進めるべきだったのに、それをつい最近まで怠ってきた。
その後、近年は禁じ手の人件費(一人当たりの給与)の削減に手を染め、小泉&竹中主導の悪法(非正規雇用の推進)によって、賃金の抑制が一気に進んでしまった。
そして、民主党&白川元総裁の無策によって、円高が一気に加速し、日本の製造業が一気に海外に逃げて行ってしまった。そして、海外との価格競争にさらされ、低賃金労働が一段を進んでしまった。

 

企業活動を行う上で、コストの削減は必須であり、どうしてもそのコストの1要素である賃金も削減の対象にせざるを得ない実情がある。それを無制限に行える様な仕組みを制限する法整備が必要なのだが、それをせずに非正規社員の増大を推進した事が大きな間違いである。
では、どんな制限を設ける事ができるのか...。それは次の改革・改善をすべきである。
同一労働同一賃金の推進と、それ以上の待遇改善
②業界または職種別の賃金の推進
③年齢別の最低賃金の設定

 

同一労働同一賃金の推進と、それ以上の待遇改善
現在、同一労働同一賃金について議論されている。しかし、これでは不十分で、非正規社員の方の賃金を高くすべきである。その理由は、非正規社員は不景気の際には、正社員の代わりに会社をクビにさせられる可能性があるからである。また、非正規社員が、管理職に就く事はあまりあり得ず、賃金はどうしても高止まりしてしまう。であれば、安定的な労働の機会を得られない代わりに、賃金を正社員の同一労働従事者より高く設定すべきではないだろうか。

 

②業界または職種別の賃金の推進
ドイツでは業界別に賃金交渉を行っていると聞く。日本でも、それを取り入れるべきではないだろうか。例えば、パイロットやキャビンアテンダント。仕事の内容は、どの航空会社でもそんなに違いはないが、LCCと昔からの航空会社とでは、賃金がかなりちがっているのではないだろうか。そもそも、賃金が違う状態で、公平な競争はできない。また国際間でも同じだ。この様な国を跨るサービス業では、賃金は国際的に統一すべきでなないだろうか。これは決して難しい話ではない。既に一部にS/W系のコンサルタントの給与は、世界的に統一化されつつある。日本を除いて...。
また、労働組合があまり作られていないその他のサービス業などにおいても、業界(または職種)別に賃金の統一化を進めるべきだ。例えばスーパーなどの低賃金雇用は改善すべきであり、非正規社員と正規社員の賃金を同じまたはそれ以上にするのと並行して、業界での共同的な賃金を決めるべきではないだろうか。

 

③年齢別の最低賃金の設定
この提案は単純で、15歳の高校生と、40歳の社会人とで、最低賃金が同じである事に問題があるとの認識による。40歳代ともなると、社会人として様々な経験をしているハズ。であれば、多少の差(上乗せ)は必要だ。そして、年金受給資格年齢層は、申し訳ないが、少ない賃金で我慢して欲しい。そしてコンビニやマックなどは、高齢者を主に雇用する事で賃金を抑え、20代~50代の働き盛りは、もっと付加価値の高い労働に従事してもらうべきである。

 

これら以外にも、沢山改善できることはある。例えば配偶者控除や103(150?)万円の壁などの税制の見直しとか、時短労働の推進など...。また課題として、他にもニートがまだまだ沢山いるし、違い将来はAIにとって人の仕事が奪われる可能性がある。これらについては、また別の機会に記載していきたい。