コンサルタントの課題認識と解決策:”ボランティア活動”の募集方法

台風19号による被災地にボランティア活動として2回参加したが、ボランティア支援に関して地域によって差が出ているとの事らしい。ボランティアの需給のアンバランスが発生しているとの事だ。
今回の災害は、広範囲に渡っており、また東京などの大都市からの距離やテレビの報道の量が、ボランティア支援の量の地域差が発生しているのだと思われる。そしてボランティアをしたいと思っている人にとって、何処が不足しているのかの情報が無く、結果的に行き先はどうしてもTVの報道頻度や行きやすい所に偏ってしまってい。募集の仕方に問題があるのではないだろうか。

必要な所にボランティアをしたい人が集まる様にするにはどうすれば良いのだろうか?色々手段はあるのかと思うが、これも一種のプロジェクト管理の考え方につながるので、自分自身はボランティア活動の管理経験はないが、考えてみたい。

 

1.現状の把握及び共有:
プロジェクトも同じだが、状況の把握とその共有を先ず第一に行う必要がある。この点について、通常のプロジェクトと似てはいる。しかし違いがあり、その違いはプロジェクトでは「”正確な”状況の把握」が必要であるが、このボランティア活動の管理においては、”正確”と云う言葉を外している。その理由は、現状を正確に把握する事は難しく、常に新しい情報が入り、その情報は必ずしも正しく無い場合もあるからである。だけども、持っている情報の開示は重要で、新しい、または正しい最新の情報が入る都度、更新する必要がある。

 

ではどんな情報の開示が必要なのか、想像してみたい。
①被害状況:
・災害範囲(面積)や災害の概要などの情報。
・浸水家屋数や、ボランティア支援が必要となる家屋数と、そのレベル(泥のかき出しの必要性、体積した土砂の厚さ、など)、出来るだけ数値で表現できる情報

②必要とする作業(支援)の整理と進捗状況:
・必要とする作業(支援)については後で再記述するが、その進捗状況を共有し、残作業及び想定される支援量(人員数及び日数)の情報。

今回、ボランティアに行く際に下調べをしようと思ったが、上記の情報を得られなかった。把握ができたのは、長野市の場合、北部地区が大変であるという事のみだった。(これも十分重要な情報ではあるが...)

 

2.必要とする作業(支援)の整理:
水害に対する支援に必要とする作業(支援)には、どんな事があるのだろうか?専門家ではないが、コンサルとしての”仮説”設定と、数は少ないが、今までのボランティア経験から推測したい。
①家の中の泥の掻き出し
②家の中の泥を掻き出した後の残土の洗い流し
③使用ができなくなった家財の家からの搬出
④使用できなくなった家財のゴミ捨て場への搬送
⑤庭に体積した泥の掻き出し
⑥道路や用水路に体積した泥の掻き出しと搬送(土嚢への詰込みと、捨て場への搬送)
⑦農地に体積した泥やゴミの掻き出しや搬出
今思いつくのは、上記の作業だが、細々とした支援は他にも沢山あるだろう。
実際に自分が行った長野市では、上記の①~⑥辺りまで作業が進んでいる。⑦の作業のボランティア依頼は受けていないが、農地は個人で、そして高齢者での経営が多いので、支援が必要と想像した。

 

上記作業は実際に自分が行って体験または見て把握できる作業で、他にも重要な支援が必要なのだと思う。実際に何が必要なのかを行政が開示・共有し、進捗状況を把握した上で、その情報も開示し、今後どんな作業が必要で、その為にはどの位の人員が必要なのかを共有する事で、ボランティア活動を行いたい人が、何処で行くべきか判断し易くなるのではないか。

例えば、床上浸水して土砂の掻き出しが必要な家が100戸あるとする。1件あたり5~10人が必要だとする(長野市では、5人を1チームとして編成に、行動していた。)。とすると、500~1000人のボランティアが必要となる。プラス、道路や農地の泥の掻き出しや土嚢への詰め込み、などなど、もっと沢山の支援が必要となる。では一体どの程度の被害があるのか、ボランティア募集をしているサイトや各地域の自治体が発信している様にはみえない。

 

内閣府のサイトでは(http://www.bousai.go.jp/updates/r1typhoon19/index.html)、これら情報は一応あるが、わざわざこのサイトを見に行く人は殆ど居ないだろう。因みに長野市では、10月14日時点では559棟の床上浸水が記録されていて、11月7日時点では2309棟の床上浸水が記録されている。また、長野市と同等またはそれ以上の被害を受けている県は、宮城・福島・栃木・茨城県。そして岩手や千葉もかなりの被害を受けている。この情報からわかる事は、災害状況は災害直後には正確な情報の把握はできず、段々状況が明確になってくる事と、被害を受けている地域はTV等での報道以上に広範囲である事である。そして数値情報の開示がいかに重要である事である。

 

結果的に、千曲川の氾濫や新幹線が浸水した長野市の報道のインパクトが大きい為か、自分は長野市に行った。長野市は、関西や中部地方からも行きやすいので、東京に住む自分は関東の被災地または東北に行った方が良かったかもしれない。適切な情報開示が有れば、長野市以外の地域に行っていた可能性がある。

 

今回の様な広範囲での災害が発生した場合、国+がボランティア募集の指針をだしても良かった。具体的には、災害地域別にボランティア募集の都道府県を推奨するとか。例えば...
長野市:長野県及び長野県以西の都道府県
・千葉県:千葉県及び東京都、神奈川県
・栃木県:栃木県、群馬県、埼玉県及び東京都
茨城県茨城県、東京都
福島県福島県、及び関東都県
宮城県宮城県山形県、及び関東都県
岩手県岩手県秋田県青森県

 

今回の災害を通じて、改めて情報の開示とリーダーシップの重要性を感じた。