コンサルタントの課題認識と解決策:農者の人手不足

一般的に、日本人は全般的に農耕民族と云われている。一方、欧米人は狩猟民族と云われている。日本人の老後の生き方の一つに、家庭菜園がある。一方アメリカでは牧場を持ち、馬に乗って遊び、ハンティング(猟銃で動物を仕留める)や釣りを楽しむ事が、豊な老後の過ごし方の一つだ。この違いをみても、やはり日本人は、農耕民族のDNAを引いていると云える。但し、勿論農業が嫌いな人も多く居る。

 

日本人は欧米人よりは農業が好きなハズだが、何故か若者には嫌われている。正確に云うと、筆者の年齢前後の昭和世代においては...。今は多少変わっている様だが、まだまだ就農人口は増えないし、嫁の来てが少ない状況が何十年も続いている現状だ。3Kと云う言葉がまだない時代から、きつくて汚くて大変な仕事だとおもわれている。だけど昨今は高齢者を中心に、家庭菜園を行っている人は増えている。やはり日本人のDNAは、農業に合っている様だ。

 

農業(または食糧)に関する課題の中で、次の2点について簡単に述べたい。
自給率が低い事
②農地や森林の開発による景観の破壊
特に②の景観の破壊については、同じく国土が狭いオランダとの比較が重要だ。オランダでは、農地と都市(住環境)をメリハリをつけて分けており、どの大都市でも近隣にまとまった農地があり、心の安らぎを取る事ができる。一方日本では、元々はオランダより遥かに豊な景観を持つ国土だが、それに安住してか、景観の破壊が著しい。農地と都市(住環境)との境がなく、虫食い状態にある。自分のヨーロッパ人の知り合いは、日本の景観及び都市環境をみて、Organized Chaosと評した。まさに、的を得た表現だ。残念ながら日本人は全体的な景観に関する美的センスが劣っているか、または社会としてどう取り組むべきかを考える能力が劣っている可能性がある。
②についてはこれくらいにして、①の自給率が低い事について、触れていきたい。自給率を能動的に下げている国家は、一体どこにあるのだろうか?英国が繁栄していた頃は自給率が低かったが、今は違って日本よりはかなり高い。国家を維持する為に、食糧の自給は哲学的に必須であるハズだが、何故かこれが日本から欠落している。まあこれ以外にも欠落している事が沢山あるが(例えば自衛)、ここでは触れず、農業に関してのみ述べていきたい。
豊な自然や景観は心も豊にし、安らぎを与えてくれる。少なくとも大多数の人にとって。国内の農業を維持できれば、自ずと景観もある程度維持できる。本来は林業も同じように重要だが、ここでは除きたい。

 

日本の農業が衰退した理由の一つに、農地の狭さがある。これは戦後の米国の悪政によっての農地改革が原因で、多くの大地主が農地を小作に分け与えた事による。特に有名なのが、山形の庄内平野の地主が、かつね日本一の地主だった云われた。正確な所有量はしらないが、小さな大名よりは多くの農地を持っていて、一説には渋谷区の2倍の土地を所有していたと...。所有する農地が少ないと、専業農家で生計をたてるのは容易ではない。少ない農地しか持っていない農家は兼業農家になるしかなく、農業を続けるよりは、企業に勤めた方が、生活が安定して楽だった。そして高度成長期にこれらの小作が田畑を売り、小金を受け取って息子に車を買い与えた兼業農家を沢山見た。自分が育ってきた農地は、ほぼ全てがコメ農家だった。代々守ってきた土地は、大事にできるが、戦後のどさくさで棚から牡丹餅式にもらった土地に、さほど大事さも感じないのであろう。

 

一方、そんな中でも頑張っている農家もいる。米農家よりは、野菜な果物の農家が収益を上げていて、特に果物を栽培している農家の収入は良い様だ。コメ農家の問題は、日本人の食文化が変わってきているにも関わらず、コメを作り続けている事と、穀物は果物や野菜と違って、日持ちするので、海外の安価な農産物との競争にさらされている事が一因ではあるが、努力を怠っている事が一番の原因ではないだろうか。

 

農業の労働サイクル(作業)は、「土づくり」「種まき・苗植え」「栽培」「収穫」「出荷」と、雑草の駆除だ。果物の場合には、「種蒔・植付け」がない代わりに、「剪定」「人口受粉」「摘果」「袋掛け」などの作業がある。コメの生産に比べて、野菜、特に果物の方が忙しい時期が長いようだが、どちらも収穫の時期が一番忙しい。しかし、穀物類の収穫は殆ど機械化が進んでおり、それほどの労働集約は必要ない。収穫時期の労働の集約が必要なのは、収穫時期が短期間な果物と野菜で、機械を使って収穫すると、傷がつきやすいモノではないだろうか?その様な作物の収穫は、どうしても人手に頼らざるを得ず、この収穫時期の労働力の確保が大変重要である。この労働力不足をどうすれば確保できるであろうか?

 

果物の収穫時期は、一般的には1~3週間程度だ。品種によって収穫時期が少しずつ違うので、複数品種を栽培する事で、2ヵ月程度が収穫時期になる。リンゴは長く、8月から12月初旬程度までが、収穫時期になるが、収穫時期がながいと云う事は、1品種の栽培が少なくなるので、労働の集約の必要性も低くなる。なので、実質忙しいのは、2週間~数週間程度だろうか。この期間に、追加の労働力が必要なのだ。

 

人手が不足しているのであれば、都会の人達を使う手もある。例えば、都会のサラリーマンの中に、有給を消化しきれていない人が沢山いる。また、有給をとっても単に家でぶらぶらするダケで、何処へも行かない人も居る。お金がないので、安近短で済ます人もいる。この様な人達に、1週間ほど農家に来て頂き、多少のお小遣いをもらっていってもらうのはどうだろうか?その際の宿泊場所は、民泊の様な形でもよいし、公民館の活用もあり得る。地方の大きな農家では、離れを持っている所もある。都会人にとっても、収穫作業は楽しいハズ。有給を1週間使い、心もリフレッシュできるのではないだろうか?

 

また、企業単位で半分研修の様な形での支援もあり得るだろう。先の東北の大震災では、企業単位でボランティア活動を行ってた企業も多くある。社員の社会勉強はリフレッシュを兼ねての農業支援は、決して損ではないだろうか?そしてこの様な個人または企業単位での活動を通じて、農業の大事さや景観維持の重要性を確認してもらう事は大変有意義だ。外国人を使う必要もない。そして一番大事なの事は、国(政治家)が、豊な国とは何かの哲学を今一度考えて欲しい事をである。