少子化問題:2019年の出生数が90万人以下に

2019年の師走を迎える時期になって、新聞やTVで、2019年の出生数が90万人以下になる見込みとの報道があった。その後、よく見るネット番組でもこの報道を取り上げ、若干の議論がされていたが、そのネット番組に出演する優秀なコメンテーターであっても、この少子化に関するコメントが幼稚だった事に、若干ショックを受けた。正確に云うと、コメントの幼稚さと云うよりは、今までこの件についてあまり考えてきていなかった事が露呈した感がある。
少子化に関する問題や、教育に関する課題は、憲法改正より重要と云っても過言ではない程のテーマであるのにである...。
そもそも、いわゆる”少子化”が問題なのかどうかを考える必要があるが、此処では出生数が少なく成る事が問題とみなして話を続けたい。

出生数を維持し、上げる為の議論は今まで沢山の人や政治家が検討し、議論してきたが、成果としてはまだまだお粗末が現状と云える。漸く、幼児教育の無償化や(但し中途半端な)、高等教育の無償化が実現し始めているが、前進しているとは云えまだまだだ。
上記の対応は、幼児教育と高等教育費用に関する改善ではあるが、少子化の問題を解決する為には、他の課題も解決する必要があり、それらがまだまだてを付けられていないし、また認識されていない課題も存在する。子供を増やす為には、または少子化が進んでいる事の原因・問題点は多岐にわたっているが、その中のごく一部しか議論されていない事が問題なのである。そこで、下記に沢山ある関連課題の中の一部を記載する。

・幼児教育費
・高等教育費
・子供の医療費
・出産費用
・雇用()
・住宅事情(住環境)
・子供を設ける親に対する教育
・”家族愛”の醸成
・その他子供を作る事に制約となる社会・文化的または習慣的な事項

上記項目の中の、上4~5項目辺りまでは議論されていると思うが、先にも述べた様に、幼児及び中高学校の教育費のみがやっと最近対策ができた段階で、医療費(子供と出産費用)については自治体レベルで個別に対応しているのが現状である。幼児教育については、全幼児が入園できる様にするにはまだまだ問題がある様だ。また高等教育での課題は、公立の定員が限定されている事ではないだろうか?やはり所得が十分ではない家庭では、子供は公立に行ってもらいたいモノ。そしてその授業料の極力無料にすべきである。但し大学になると、教育の質を維持する必要があるので、勉強しないまたはついてこれない学生には、退場してもらうなどの改善が必要だろう。

さて未対応なのが、これ以外の課題に対する対策だ。まずは雇用について。出産前後の休暇は定着しつつあるが、雇用に関してまだまだ取組む必要がある課題がある。その一つが復職してからの時短労働の実施や、自宅労働の実現である。つい最近の報道で、日興証券が週休4日をOKとするとの記事があったが、これはあくまで親の介護の為。同様の取組みを、子育て中の親にも適用した方が良いのではないだろうか。時短労働にも色々パターンが必要で、1日4時間労働、6時間労働、そして日興証券の例の様に、週休3日や4日など、色々メニューがあっても良いだろう。そして自宅就労も認める必要がある。
雇用に関して、単身赴任の多さも多少、子育てに影響していないだろうか?子作りする時間の事ではなく、子供を育てる時間を共有・分散できない事が多い。大企業では、自宅を購入した途端に転勤になる場合もある。折角の新居を他人に貸し出したくないので、妻は新居に残り、旦那は単身赴任するケースも少なからずある。このやり方を、企業として是非を問う必要がある。また、また転勤に関して、住宅または不動産に関する考え方や、教育に関する課題も関係する。20年程で資産価値がなくなる様な住宅ではなく、100年使える住宅の開発や、リフォーム費用の低減そしてリフォームし易い住宅の開発、そして中古住宅を購入する事の抵抗を減らす事など。教育については高校における転向のしやすさや、などなど...。これらの懸念事項が、単身赴任を増やしている原因の一部ではないだろうか。

次は住宅事情の課題だ。都会の家族向けマンションの主体が3LDKまたは4LDKなのだが、3LDKで子供を二人持つ家庭は少ない。3LDKでの一般的な間取りはリビングに接続する形で一部屋があり、その部屋は通常畳の部屋になっている。その部屋は一般的にはリビングの延長か、半分物置の様に使っている家庭が多い為、残りの1部屋が夫婦の部屋で、子供部屋は一部屋しか確保できない。であれば、家族用のマンションは最低4LDKにする必要があり、出来れば5LDK欲しい所である。そうすれば、1夫婦あたり2ないし3人の子供部屋を確保する事がし易くなる。

また、子供を設ける親に対する教育も必要である。家庭を持ち、子供を育てる事の楽しさや価値を、共有する社会を作る必要がある。これについては、昨今の教育勅語に反発するマスコミ報道があるので、難しい課題ではあるが、大変重要な事である。また、欧米に比べると家族の絆または単純に家族で助けある事の意識が、日本人には薄い感がある。映画やTVドラマをみても、USでは家族の絆や愛情が良く表現されているが、日本のそれには家族の絆や愛情を表現している映画やTVドラマが少ない。一方、社会人としての葛藤や絆を表現している番組などは多くあるが...。この様なTV番組や映画を見て育った子供達が、”家族愛”をどう考えるか。また、仕事を終わってからの社会人の時間の使い方は、家族と過ごす時間ではなく、同僚同志で過ごす事が多い。
欧米人と日本人とは違う人種であり、違う文化を持っているので同じことをする必要はないが、日本人は欧米人と比べ、家族の絆が薄い様に感じる。社会全体で、この意味・意義を肩ひじを張らずに議論できる環境作りが必要ではないだろうか?これが次の”家族愛”の醸成につながる。その上で、子供を持つ親になる人達に対して、子どもへの向き合い方、家庭内での幼児教育(または子供への接し方)の重要性をしててもらう様な教育が重要となる。

最後に、日本特有の社会・文化的または習慣的な事も、このままで良いのか考える事も必要だ。例えば、育児や家事の実施が女性に偏っている事であったり、残業が当たり前になっている日本の社会の原因を作っている、横並びを好む日本人のマインドであったり...。自分達日本人の習性を理解し、他国との違いも理解し、日本人としての長所を生かしながら、どの方向に進むべきまたは改善すべきかをじっくり考え議論する必要がある事を最後に述べて終わりたい。